2012年3月31日土曜日

文化大革命の傷跡・奪われた人間の信頼関係

大地の子」ー3についての感想

今週は「大地の子」の第三部分、「黒災」と「長城」を見た。著者の山崎さんが描写した文化大革命はまるで目の前にあったように真実感を持っている。今回私は述べたいのは、文化大革命の傷跡(きずあと)の一つ・奪われた人間の信頼関係だと思う。

陸一心が冤罪で逮捕された時あった告発集会
主人公の陸一心は逮捕された時、自白出来なかったので、労働改造所にあった集会に引きすり出された。この集会は告発者は刑期が軽減(けいげん)されるというので、労働改造の言いなりの告発をするという集会だと言われた。陸一心にとって夢魔(むま)のような事件だった。私はこれらの集会がとても残酷なので、反対すると思う。自分の利益のために、お互いに告発したのは考えられない。しかし、私の親によると、文化大革命の十年間で、監獄だけでなく、学校、職場などの日常場所での告発も全然不思議ではなかった。その影響により、私の親の世代は人間を信頼することができなくなった。私が小さい頃から、母は何度も「他人を害してはいけないが、他人を防がなければならない」と教えてくれた。しかも、私の世代はよく「滑り落ちた老人を助けてはいけない」と教えてもらった。なぜなら、これらの老人は「あなたが私を打ち倒した」と言い、お金を強要するかもしれないからだ。今の中国社会にこのような人間の不信頼感が多いのは、文化大革命にある告発集会の影響が残っているのではないだろうか。

したがって、告発集会のような行為を勧めたのは、とても残酷だったと思う。人間の弱さを利用し、統制者にとって効果がいいツールだったが、本質的に人間性を滅殺する手段のではないだろうか。それは独裁政府(例えばドイツのナチ)がよく使った手段だが、実際人民の支持を得ることができないだろう。しかも、もし人間がお互いの信頼関係を失ったら、その社会も大変な不幸になると思う。

それ以外、告発が中国人の伝統道徳に違反したのだ。中国社会は何千年前から清朝までずっと儒教を信仰していた。孔子を最高の徳目としていた。「仁」とは、主に「他人に対する親愛の情、優しさ」を意味しており、儒教における最重要な「五常の徳」のひとつだった。人民の支持を得られる手段は仁義(じんぎ)しかないという論説もあった。儒教は現代社会に応用できない部分がたくさんあるが、「仁」の重要性がまた応用できると思う。つまり、人民の支持と民族の団結を得られるのは刑罰でなく、仁義である。仁義は人間の信頼関係を基づいているものだ。告発集会などのような文化大革命であったことは人間の信頼関係を奪った上に、この民族の仁義も奪ったので、大変な傷跡になっていたのだはないだろうか。


前の相関記事:
文化大革命・中国の抗日戦争、大躍進政策と文化大革命
大地の子2・文化と言語についての考え
大地の子1・残留孤児を育てるのは正しいか?




3 件のコメント:

  1. 告発の行為を勧めるのは本当に非人道的だと思います。文革は中国人はお互いへの信頼感の低下の原因になるという点に完全賛成します。最近、高等教育を受けてきた若い世代の間で反転の傾向があると思いますが、中国は完全に孔子が提唱した「仁義道徳」の社会に戻るのは長い時間がかかるかもしれません。

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  2. 人と人の間の信頼を失ったというのは凄く悲しいことです。社会学では信頼が重要な「社会的資本Social Capital」だと言います。信頼がある社会は犯罪率も低くて政治や社会活動に参加する人も増えるし、引取りのリスクの低くなりますので経済のためも信頼は大事な要素だと言われます。だから、信頼がないというのは国家的にも凄く残念なことでしょう。今はどうですか。文革の時に比べて信頼を回復したのですか?

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  3. 私はウェンさんの意見の賛成です。告発集会の行為は非人道的だと思います。でもこんな行為は珍しくないですね。力は人を腐らせるからです。そんな立場から見ると、その人たちは自分の地位と力を保持する為に、自分にとって良好な考え方を広げようとしていました。そして反対の声を消そうとしていました。

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